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Galaxyアポ通

概要

ジャンル
ファンブック
発売日
2013年8月12日(コミックマーケット84 3日目)
イベント価格
500円

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えぷと氏による力作のフ●ミ通っぽい表紙が目印です!
中身はいわゆる『ファンブック』です! (攻略本ではありません、中身にはフ●ミ通要素はありません)
見所はズバリ!!


  1. シリーズのキャラクター詳細データを完全収録!
    身長、座右の銘からなんとスリーサイズまで、秘蔵のデータが大量に収録!
    誰が最強の死亡フラグ建築家で、誰が最もバカな脳筋かもわかります!!
    制作秘話なども多数収録。初めて明らかになる設定も......?

  2. 完全書き下ろしのサイドストーリー収録!
    ディレクターの彼岸堂による、ゲームでは見えなかったアナアポ世界を描く大ボリュームのサイドストーリーを収録!
    お馴染みのキャラクターも多数登場!

  3. Ⅱのその後を描いた初子氏による描き下ろし漫画収録!
    ミコトが『ある計画』に向けて奔走......?
    ちょっとハートフルな後日談をお届けします!

ファンブックという体裁ですが、シリーズを楽しんでいただいた方はもちろん、
新たにアナアポの世界に触れる人にも向けて製作しました!

サンプル

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サンプル(テキスト版)


 ――――青い海を見ていた。


  * * * 

 太陽系の。
 第三惑星のある島国の。
 その東の、大海と面した断崖の松林。
 その林の、海に臨む場所に、旧時代的な木造の平屋が一つ。
 白い薄手の和服に身を包む『彼女』は、昇りゆく太陽と、照らされる海と、その空の色を縁側に立って眺めていた。
 おろされた長い黒髪が、潮の匂いを孕んだ風に揺れる。
 やがて、夜の残滓たる薄闇が、後方の空にまで追いやられていく。
 彼女はそれと共に、「よし」と一声発する。
「朝ごはん、作ろ」
 それは確認の言葉。彼女の日課。
 『史上最強の咎人』たる少女・ミコトの一日は、ほぼ確実にこの言葉から始まる。

   * * *

 居間の食卓には、二人分の食事が並んでいた。
 鰺の開きを焼いたものと、ほうれん草の胡麻和え。
 大根と人参の浅漬けに、豆腐の味噌汁。出汁巻き卵。
 そして、ほかほかの白米。
 ミコトがそれらを並べて自分の場所に座るのとほぼ同時に、居間の襖が開かれる。
 現れたのは、非常に大柄な白髪の男だった。
 大きな欠伸を見せながら、彼はミコトの向かいに腰掛ける。
「おじ様、遅いわよ」
「おう、すまんすまん」
 男は、纏う雰囲気や白い髭面から老成を感じ取れるが、やや荒々しく着こなした着物の内側には、老いとかけ離れた恐ろしく屈強な肉体を覗くことができる。
 ......この『最古の咎人』コンゴウと、ミコトに血縁関係は無い。したがって、二人は孫娘と祖父でも何でもない。
 だがそれは、何も知らない人間からすれば驚くべき事実と言える。何故なら。
「朝はせめてご飯並べる前に起きてっていつも言ってるじゃない」
「昨日は起きただろ?」
「今日は起きなかったわ」
「まぁまぁ。これで貸し借り無しってことで」
「どこが貸し借りなのやら......大体、おじ様みたいな歳の人はみんな早起きなんじゃないの?」
「それはあれよ。俺がまだ現役ってことをあらわしているのさ」
「物は言い様ね」
 くすくすと笑ってから、コンゴウと一緒に手を合わせるミコト。
 「いただきます」と揃って言う二人の姿は、家族のそれであることを誰にも疑わせない。

   * * *

「じゃあおじ様、お皿の片付けよろしくね」
 綺麗に食べ終えたミコトが、立ち上がりながら言う。
「おう。今日はどれぐらいに帰ってくるんだ」
「んー。多分いつも通りよ」
「そうか」
「おじ様は?」
「今日は『お呼ばれ』が無いから留守番だな」
「わかった。真昼間からお酒飲まないでよ?」
「へいへい」
 コンゴウが皿を持って台所に向かうのを見届けてから、ミコトはぱたぱたと自室に戻る。
 そして、姿見の前で『制服』に着替え始めた。

 ......咎人である彼女が、普通の人間の少女のように『スクール』という教育機関に通うようになってから、一年と少し。
 その期間に、様々な『普通の出来事』と遭遇したおかげか、今は、その制服の着こなしからわかる程に、『普通の少女らしさ』を獲得している。
 ミコトは、このスクールの制服が気に入っている。
 その気になれば容易に人類の大敵となり得る力を持つ『異端の極み』である彼女が、その危険性を秘匿し、『普通』に埋没できるような感覚があるからだ。
 しかしミコトは、自分の異常性を嫌っているわけではない。
 むしろ彼女はそれを好んでいる。
 若干の矛盾。
 ......彼女の中で少しばかり、普通と、普通ではないものが複雑な何かを形成していた。

 全ての身支度を終え、姿見の前で最後の確認を終えてからミコトは玄関に向かう。
 その道中、彼女は制服のポケットに入れていた掌に納まる程度の四角く薄い物体を取り出し、側面にある僅かな突起を軽く押す。
「おはようございます。ミコト」
 『画面』にあたる部分から立体映像として表示される、デフォルメされた頭身の少女。
 神秘的な衣服と、ウェーブのかかったライトグリーンの長い髪が印象的な彼女は、ミコトの持つ四角い物体――この時代における情報端末――の人工知能を搭載したインターフェースである。
 一見、市販されている一般の情報端末と同じようなものだが、その実、ヒトのテクノロジーの粋が詰め込まれたとてつもない代物であった。
「おはよ、ガッちゃん」
 ......当然のことながら、この『ガッちゃん』という重さも何もない愛称はミコトが勝手につけたものである。実際の正式名称は『ガイア』だが、可愛くないという理由で封じられてしまっている。そしてミコトもその正式名称を忘れつつあるのが実際であった。
 ......ミコトには、この『ガイア』を持たされている理由が存在する。
 存在はするのだが――――。
「本日の天気は晴れ。気温は二十一度。風は無く、絶好の通学日和です」
「はーい」
 本来の用途と違う形になっていることは、言うまでもない。
「本日のアースアジア圏トップニュースは、統合軍土星支部の構造改革による影響に関して......」
 ガイアの口にする情報を適当に聞き流しながら、玄関に置かれていたスポーツタイプの自転車を、ガイア内にインストールしてあったインテリジェントキーで駆動可能状態にする。
 実際はカゴをつけられない車種だが、ミコトの魔改造によってスクールの鞄が入る程度のものが取り付けられている。
 サドルに跨って鞄を入れる頃には、ガイアのトップニュースのアナウンスは終了していた。
 ミコトはガイアを自転車のハンドル中央部にあるホルダーにそのまま取り付ける。直後、自宅からスクールまでの距離、到着予想時間、交通状況などが立体映像で表示される。
 その立体映像の間に挟まった位置で、注意を引くように『!』マークの書かれた看板を持つガイア。
「どうしたの?」
「今日はスクールで一件の重要なイベントがあります」
「ん? なんだっけそれ」
「進路指導です」
 ガイアが看板をしまうと、彼女の掌からウインドウが飛び出して開かれ、新たな情報が表示される。
 確かにその文字列の一番上には大きく『進路指導のお知らせ』と書かれていた。
「......進路指導?」
「スクールから、卒業までの在学期間が一年半以下の学生全員に送信されたものです」
「ふーん」
 特に気にすることなくミコトはそのウインドウを閉じ、交通情報の表示を小さくしてから自転車を漕ぎ出す。
「いってきまーす」
 家の奥から、コンゴウの間延びした声が響いたような気がした。

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